口が開かない・あごが痛い

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  若年層に顎(がく)関節症という病気が増えている。あごをうまく動かせなくなったり、動かすと痛んだりする。原因があごというよりも生活習慣にあり、その改善が必要なケースもあるいう。

 銀行員の女性Aさん(23)は歯並びを治そうと歯科医を訪れた。問診の際、たびたび口が開かなくなり、下あごから首にかけて痛みもあると説明、顎関節症と診断された。スプリントと呼ばれるマウスピースを歯にかぶせ、かみ合わせを良くした結果、3週間後に症状が軽くなった。しかし、外すとまた悪化した。

 医師がAさんの生活を詳しく聞き取ったところ、残業などでストレスが常に大きいことが分かった。仕事中の体の姿勢に気をつけ、適度な運動を毎日心がけると、症状は改善に向かった。

 顎関節症の患者数はよく分かっていないが、日本顎咬合(こうごう)学会が2002年に歯科診療施設に通院する6歳以上の1万7000人を調査した結果、男性の9.9%、女性の17.3%に顎関節症の症状があった。年齢別では11歳ごろから比率が急増していた。

 調査の中心メンバーだった明海大学歯学部の岡部良博・助教授は「あごの関節は20歳くらいまで成長しており、それに伴い発症するケースが多い。最近は20代の患者が増えている」と指摘する。

 顎関節症には大きく3種類の症状がある。まず、あごを動かす筋肉に障害が起き、痛みがなくても口がほとんど開かなくなる。食べ物を口に入れる程度のすき間もあけられないという。

 2番目はあごを動かすと痛む。明け方、夜など症状の出る時間帯が決まっていることも多い。3番目は、あごを動かすと「ポキ」などの雑音が聞こえる。これら3症状のうち2つ当てはまれば顎関節症の可能性が高いという。なお、動かさなくても痛い場合は頸椎(けいつい)症という別の病気の可能性がある。

 診察時には症状を確認されるほか、日常の姿勢や睡眠、スポーツ歴、日ごろ受けるストレスなどについて質問を受ける場合がある。なぜなら「顎関節症には生活習慣による患者もいる」(日本歯科大学付属病院・顎関節症診療センターの丸茂義2センター長)からだ。

 日ごろの立ち方、歩き方など姿勢の良しあしやストレスなどが大きく影響するという。医師によっては、患者に日記を書いてもらい、いつ、どのように症状が現れるか調べる。必要に応じてあごや首をレントゲン撮影して判断する。

 治療法の第一は生活習慣の改善だ。ほおづえをつかない、足を組むのをやめる、そしゃく回数を増やすなど正しい姿勢を維持することが大切で、特に若年層では注意が必要という。

 例えば、一般に中学生くらいから肩掛けかばんをさげるようになる。片側に重みがかかるので、姿勢のバランスが崩れてくる。また、早食いの癖が出てきたり、部活動でスポーツを始め体を痛めるなど、様々な要因が関係するという。

 治療にはマウスピースで、かみ合わせを治す方法もある。ただ、マウスピースは大きさや形のわずかな違いで効果が大きく変わる。調整には高度な技術が必要だ。

 日本大学松戸歯学部の付属病院は関節雑音のある患者を対象に、耳の中で音を出し、それが骨などにぶつかって戻ってくる反射音から最適なかみ合わせを見つける方法に取り組んでいる。これでマウスピースを調整する。国の高度先進医療の指定も受けた。

 顎関節症は年齢を経るとともに新たに発症する人は減っていく。患者によって原因が異なるため1概には言えないが、神経の慣れや老化などによるともいわれている。正確には分かっておらず、今後の研究課題。ただ、高齢者でも、姿勢の悪さやストレスによってはかかる可能性があるため油断は禁物だという。

顎関節症の症状

下あごの運動障害...食べるときに箸(はし)が歯にぶつかるなど、口がうまく開かない。あごの位置をずらさないと口が開かない
あごの関節部や筋肉の痛み...動かす際に鈍痛。側頭部の筋肉を押すと痛む。硬いフランスパンが痛みで食べられない
あごの関節の雑音...口を開いたり閉じたりするときに、ポキ、ジャリ、カックン、パチなどの音がする。症状がひどい場合には隣の人にも聞こえる
場合によっては「耳が聞こえにくい」「首が痛い」「歯が痛むが、どの歯か分からない」「目がしょぼしょぼして涙がでる」などの症状が出ることもある